スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2-3

「誰?」

私が部屋に入ると同時にいきなり警戒心まるだしの声が飛んできました。
無理もありません。
彼女の家族は音信不通。
そして、ここに来るのは特別な看護師かお医者様だけ。
いきなり見も知らぬ男が来るなんてありえませんからね。

「始めまして。私、二宮冬季と申します。職業は高校生と幻殺士です」

とりあえず、丁寧に自己紹介。
これで少しは安心してもらえるでしょうかと思ったら大間違いでした。

「幻殺士・・・なるほど。私を殺しに来たということね?」
「いえ、そうではなく」

いきなりとんでもない誤解炸裂です。

「いいのいいの。どうせ、自分の能力を制御できないんだから、そろそろかなーって思っていたんだし」
「えっと、その・・・」
「はい、どうぞ。一思いにやっちゃって」
「あの、すいません。ちょっと冷静になっていただいてもよろしいですか?私は別にあなたを遮断・・・いえ、殺しに来たわけではないのです」
「え・・・?」

心の底から驚いたようにポカンとした顔をしました。

「私はあなたを治療・・・とはちょっと違いますね。普通の生活に戻れるようにしに来たのです」
「・・・嘘」

まったく信じていない目で見られました。
まあ、当たり前ですよね・・・。

「いえ、嘘ではありません」
「幻殺士って、幻と判断したモノを全て殺すんじゃないの?」
「それは俗説ですね。幻殺士は非常に細かい規定とかありまして、そんないつも殺したりとかするんじゃないんですよ」
「は、はあ・・・」
「あ、信じていませんね?」
「そんな急に現れて、幻殺士が『あなたを治しに来ました』って言われても信じられないって」
「まあ、そうですよね」

財布から一枚の護符を出しました。
いや、カードという方が合っているでしょうか。

「これ、お渡しします」
「うわ、なにこれ・・・」

露骨に顔をしかめられました。
いっぱい漢字とか書いてありますからね。
怖いというか、不気味ですよね。
お経っぽいのがめっちゃかかれていたものを渡されればね。
ですが、これは重要なものなんです。

「これはですね…」

と、説明しようと思ったその時、突然、彼女のベッドのそばに置いてある花瓶が発火しました。。
スポンサーサイト

2-2

特別収容患者と言っても、精神的におかしいとかいう人たちが入ってるわけではない。
そこに入院しているのは能力に関する悩みや障害がある人たちでした。
たとえば、体が変身したものから戻れなくなった、とか。戦闘によって体の一部が欠損したから、とか。
もちろんそれだけではありません。
中には手に入れた能力を失いたい人もいる。
そして、もっと珍しいのが能力が全く制御できないために隔離されている人もいます。

「連絡は受けています。こちらです」
「どうもありがとうございます」

夏目恵理は珍しい方でした。
それゆえに、万全の予防がなされた部屋にいます。
いや、収容されています。

「ここです」
「ここが、ですか」

ただただ圧倒されました。
能力を押しとどめる印や呪文がいたるところに張り巡らされたフロアに。
チリチリと肌を焦がすような痛みが全身に走ります。
無視できそうで出来ない微妙な加減です。

「この痛みは…」
「能力に反応する特殊な印を京都の四上院家から送ってもらっています。それの影響です」
「そう、ですか」
「あ、こちら渡すのを忘れていました」
「札ですか?」
「ええ。これを持っていれば痛みは少なくとも半減程度までは収まるはずです」

確かに札を渡されたら痛みが魔法みたいに引いていきました。
痛いというよりもかゆいという感じくらいまで。
出来ればもう少し早く出してもらいたかったです。

「では案内の方お願いします」
「こちらの一番奥のほうになります。最重要指定されている患者様ですから」

静かな廊下に二人分の靴音だけがこだまします。
病院内といえども、不自然なほどの静かさです。
各部屋に防音処置でも施しているのでしょうか。
そうでもないとここまで何の音もないというのはおかしいです。

「二宮様は不安になられないのですか?」
「というのは?」
「ここまで静かなのに私はとても不安に駆られます。ここはいろんな患者様がいますから各部屋だけではなく、廊下まですべて防音処置が施されているのです。実際にこの私たちの会話さえ、扉一枚隔てた部屋では何も聞こえないのです。逆に言えば、部屋でどれだけ音を立ててもよっぽどのことさえしない限り何にも廊下に聞こえてきません。その不自然すぎる静けさが私は怖いのです」
「わかります。私も平時と頭ではわかっているのですが、どこか緊張しています。これから何かとんでもないことが起きるのではないかと思えるほどに」

臨戦状態にしなければいけないような気がしてきます。
全く戦う必要もないというのに。

「ここが、彼女の部屋です」

インターホンを鳴らすと、ネームプレートに赤いランプがともりました。
入るのを少し待つと、今度はランプが蒼に。
そして、扉が開きました。

2-1

平日の午後三時すぎというときだからか。電車は帰宅部の中高生やマダムでいっぱいだった。
電車を降りて駅に出る。
駅前は賑やかだった。
どこのカフェも盛況だし、ゲームセンターにはちょっとガラの悪そうな男子学生や、これまたちょっと見栄えの悪い化粧をした女子学生がクレーンゲームやプリクラを楽しんでいる。
と思ったら、サラリーマンのような人がコーヒータイムを満喫していたりした。
そんな制服やスーツの中を冬季は、赤を基調とした私服で歩いていた。
ただぶらぶらしているわけではない。目的地はもう見えていた。

幻灯市記念大学病院

幻灯市内にある病院の中でも一、二の規模を争うほどの総合病院。
ただしこの病院は能力者を収容するための施設という、いわゆる裏の顔を持っていた。
そこに冬季の今回の仕事に関係する人物がいる。
夏目絵里という名から女性だという推測はつけてある。
男性だったら驚きなのだが。
病院に入ると、中は患者さんや看護師さんでいっぱいだった。
にもかかわらず、静かだ。
さすが病院と言ったところか。
とりあえず、総合受付に行く。
まずはこちらへという誘導に従った結果だ。
「こんにちは。どうなさいましたか?」
「ちょっと面会を」
そう言うと看護師さんは奥の方を指した。
「それでしたら、奥の方に行くと面会受付がありますからそちらの方でお手続して貰うことになります」
「わかりました。ありがとうございます」
一礼して面会受付に行く。
「こんにちは。面会を希望でよろしいですか?」
「はい。夏目恵理さんのところに」
「夏目・・さん?少々お待ちいただいてもいいでしょうか」
「どうぞ」
受付の人はキーボードを叩き始めた。
恐らく、一般患者のリストには入っていないのだろう。
待つこと五分。
「すいません、こちらには夏目恵理さんというお方はいないようですが…」
「そんなことはないはずです」
「ええ、わかっています。ですのでこちらの方を記入していただいて…あ、その前に身分証などはお持ちでしょうか?」
「はい、これでいいですか?」
生徒手帳ではなく、幻殺士証というカードを渡した。
当然、証明写真もプリントされている公式の物だ。
「…はい、ありがとうございます。それではこちらの書類にですね、お手数ですがお名前とご住所のほうをお願いします。…はい、ありがとうございます。こちら、入所証ですね。こちらを身に着けて、奥にあります緊急口からお入りください」
「緊急口から?」
「ええ」
恐らく、一般の人たちが入らないように偽造したのだろうと勝手にあたりをつけた。
「お帰りの際には出入り口付近に回収所がありますのでそこでお願いします」
「わかりました」
受付を終え、非常口…に偽造された特別主要患者たちがいる病棟に続く入口へ行った。

1-5

「おはようございます、宗春さんですか?」
「おはよう、冬季!朝からどうしたの?」
「実は、今日のお昼から家の依頼が入っていまして…」
「なるほど。つまり特別早退したいってわけだね」
「話が速くて助かります」
                ・ ・ ・
「わかったよ~。んじゃ、理事長として先生たちにその旨を伝えておくわ」
「よろしくお願いします」
そこで携帯…というかトランシーバーみたいな通信端末を切った。
高校二年生ながら、幻殺士、そして学校の理事長という親友であり、遠い親せきである四季宗春。
幻殺士で高校生の自分とは比べ物にならないほど忙しいはずなのですが、いつもマイペースで、疲れたという顔を見た事が無い尊敬できる人です。
「これで、お昼に学校を抜け出せる準備はできました。次は…」
今度はいささか時代遅れのガラパゴス携帯電話を取り出し、業者に連絡。
「お昼に一度、そっちに行きます。適当な私服、ええ。上下ともに用意しておいてください、デザインは軽視、機能性を最重視して。色?そちらに任せます。代金は家に請求してください。」
さすがに制服で真昼間から行動するというのはさすがに目立ちます。
幻殺士の存在は本来裏のはずなのですから、目立ってはいけないのです。
まあ、私の能力は炎ですから使えば目立ってしまうんですけど…

「電話はもういいのか?」
電話をテーブルの上に置いたタイミングで正面に座る和哉さんが聞いてきました。
「はい、あらかた関係者等へのものは終わりました」
いま、私は和哉さん。いえ、一之瀬家本家の食事場で朝ごはんをいただいています。
今日はポトフにサラダ、そして白米となっていました。
さすが料理人さんが作る朝ごはんということでとてもおいしいです。
「今回の依頼には龍虎会となの、指定暴力団体が絡んでくると言った話を聞いたんですが」
「どこから」
「父からです」
「ほう…」
たいして興味のないような態度でポトフを飲んでいますが目は真剣でした。
こういう時にその目をするということは何か知っている。
「その龍虎会ってのはお前のほうが詳しいんじゃないのか?」
「まあ、家業がら」
「どんなところよ?悪いが俺はそういうのあんまり知らないんでね」
うそだ、と思いました。
が、それを口出す必要はありません。
代わりに私は龍虎会のデータを口にしました。
「結成は昭和四十年。本部は愛知県那由他市、支部は来たから順に北海道、青森、東京、和歌山、愛媛、広島、佐賀にあります。珍しく全国展開している団体ですね」
「これほどうれしくもない全国展開も珍しいがな」
「そうですね、近年は勢力の衰えが出てきていたんですが、最近能力者や術師をスカウト…という名の拉致、洗脳をして再び盛り返しています」
「そりゃまたすごい団体だ。所定の公認団体に登録していない異能力を使う者たちは幻として俺たちの粛清対象になるっていうのに」
「そうなんですよね。しかも反社会的な行動をしますから私たちも例えその者を保護したとしても、結局遮断しなければいけない可能性も出てきますし」
「で、その団体がお前の保護対象に入っている人を狙っていると」
「そういうことらしいです」
2人とも同じタイミングでお茶を飲み干した。
しばらく何も言わずに空になった湯呑の底を和哉さんは見ていました。
「もし、ぶつかったら…」
「ぶつかったら」
「幻殺術の行使を許可しよう」
「しかし、相手はこの世界の住人です」
「我々幻殺士の命、および普通の人の平和も脅かすものたちだ。それに、任務中の俺たちを相手にしてくる時点で、正当防衛も成立する」
和哉さんは本気だ。
ごくりと生唾をのむ。
「どうしても何かあったらその時に俺に連絡しろ。それ以外はお前の判断で力を行使していい」
ただし、と和哉さんは付け加えました。
「間違っても一般人は巻き込まないようにしろよ」
「了解しました」

1-4

今回のこの訓練は始めの合図が無い。
したがって、何時、どのように始まるのかがわからない。
一番奥の機械の陰に案山子を立てて、じっと息を潜めて待った。
一分、二分…
バアーーン!!とドアが爆破されたような轟音が響き渡った。
思わず顔をしかめる。
「どこに行きやがった、あの野郎!!」
「っ!」
再び現れた和哉さんは完全武装をしており、そのうえ、本気の顔をしていた。
「出て来い!!さっさとやつを渡せぇ!!」
その咆哮にも似たような声に続き、何かが破裂した音が連続で発生した。
恐る恐る顔をだし、確かめる。
「本気ですか…」
散弾銃から煙が出ていました。
しかも、自分の隠れていたところを含め、一面にまんべんなく弾痕が刻まれています。
「出てこねえなら…」
ガチャリと音がする。
反射的に私は飛び出していました。
「やめてください」
「何を言ってるんだ?」
「へ?」
「へ?じゃないだろうが!!俺たちの追っているやつを出せって言ってんだよ!!」
「うわっ」
撃たれる。
それを察知した私は能力を発動した。
それとほぼ同時に和哉さんの銃が火を噴く。
発砲音だけが聞こえてくる。
「…てめえ」
しばらく続いた発砲音が止み、和哉さんの怒りに染まった声が聞こえてきた。
自分にダメージはない。
なぜなら目の前に紅蓮に染まる壁が出現していたから。
二宮獄炎流、焔壁。
大概の物質ならその高温の炎の壁で蒸発してしまう。
そしてその壁を飛び越えて和哉さんに炎で作った剣で切りかかる。
和哉さんは横に跳んで再び引き金を引いた。
私は炎の剣を振い、炎の剣撃を飛ばす。
衝突音はない。
剣撃に触れたものはすべて焼かれるのみ。
銃弾程度なら焼くだけではなく、やはり蒸発するだろう。
そして剣撃は勢いを失うことなく和哉さんに襲い掛かる。
しかし、和哉さんは少し自分の立ち位置をずらすだけでその剣撃をかわした。
そして銃を投げ飛ばしてきた。
慌てず銃を焔弾で焼き尽くす。
「うおおおおらあああ!!」
「ちいっ」
その間に懐に入られ、いつの間にか握られたダガーを私を襲う。
状態を捻り、間一髪でその攻撃をかわすが、続いて出された足払いを避けれず倒される、所を
「くそっ!」
体を炎と化し、倒れる予定の場所から離れた場所に出る。
二宮獄炎流、炎心と呼ばれる業である。
体を炎と化することによってほとんどの物理的な攻撃を無力化させ、この状態で敵に触れば焼くこともできる。
しかし、
「そのダガー、反能力物質ですね」
「聞かれて答えるとでも、思ってるのか!!?」
人間ではまずあり得ない瞬発力を発揮し、一気に肉薄される。
「焔剣!!」
手に再び炎の剣を出現させ、ダガーを受け止める。
いや、受け止められた。
この剣を止められるのは何かしらの能力で作られた剣や棒か、先ほど聞いた反能力物質が混じったもの。
和哉さんは体術は本気を出しているものの、能力はまだ出していない。
そこから導き出されるのは、反能力物質!
「勝負中に考え事とはいい度胸じゃねえか!!」
「しまっ」
後悔しても遅い、わずかにできてしまった隙を和哉さんが逃すはずもなく、そのダガーは蛇のように私の眉間に迫り、
「ここまでだな」
「……」
薄皮一枚と言ったところで止まった。
体からどっと冷や汗が出る。
そして力が抜け、その場に崩れ落ちた。



「負けました」
そのあと、出されたタオルで額をぬぐいながら負けを認めました。
しかし、和哉さんは納得していないというような顔をしています。
そして無言で私から離れ、案山子を隠した場所に行きました。
戻ってきた和哉さんの手には、顔に銃痕がある案山子がありました。
「お前は二重に負けた」
「二重…」
「ああ、お前はなんで俺と戦った?」
「え?」
それは…
「お前の今回の目的、いや、任務は護衛対象の護衛および安全圏まで護送だろう」
「その通りです」
「だろ?なのにお前は自分が殺されたばかりか、護衛対象まで死亡させてしまった」
こんな風にな、と案山子がぽいっと捨てられました。
そして一瞬で塵になり、そのまま不可解な風に外に運ばれて行きました。
和哉さんの能力、風を使われたのでしょう。
「守る…というのは何かを捨てなければいけない」
「何かを、捨てる」
「そう。たとえばさっきの時、俺はお前が出てこないと思った」
最初に銃弾をばらまいた時だろう
「なぜですか?」
「お前、警護対象一人にして守れるの?」
心底呆れたというような声でした。
「もう一人、誰か仲間がいるならばああいう感じでもいいけれど、さっきの場面にはお前ひとりしか警護者は頼れるものがいないはずだ。その場でじっとしてろと言ったって、動いてしまう可能性が高い。それに、俺がもし複数人なら、お前を俺がひきつけているうちに別の行動隊が警護者を攫っていたかもしれない」
「確かに・・・」
それは盲点だった。
そう思うと、すぐさま出ていって戦った事がおろかに思えた。
「しかし、すぐに戦いに出たとしてもいい」
「なぜですか?」
「お前が自分の身を守りながら、警護者に神経をさき、さらに追跡者を全滅させれるなら、だけどな」
なるほど。
「それだと、一瞬で勝負を決めることがカギになりますよね?」
「それは状況次第だろ」
そこまでは知らんと言われた。
そこまで自分も和哉さんに頼る気はなかった
「守るならば、まず戦うという選択肢を捨てろ。どうしてもたたかわない状況ならば、自分の何かをなくしたとしても警護者を守り抜け。それが」
「「幻殺士」」
2人は顔を見合わせ、どちらからもなく笑い出した。
その後、お風呂借りてさっぱりした後、学校に登校しました。
和哉さんと同じ高校、同じクラスですがちょっと事情があるので一人で行きました。
プロフィール

結城

Author:結城
結城 史進(ゆうき ししん)
大学生から社会人に変身した。
最近は仕事をする傍らで帰ってからSS書いたりするのが趣味。
合同誌に少しながら参加していったりしてます。

最近の参加/発表作品
C90 
清霜合同(主催:kogasana様)
砲雷撃戦!よーい!合同演習四戦目 
こんにゃく合同(主催:せのん様)
坂之上鎮守府の一日~榛名、頑張ります!~
C91
潜水艦合同(主催:茶在)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

来訪者数
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。