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台風一過

「…以上が今回の連絡です。ほかに質問等ありますか?」

無いな、と思った。
ここは大湊警備府の総本部。
大湊が管轄するすべての鎮守府の提督たちがここに集っていた。
周りの提督たちも資料を読んでいるか、となりの提督と話していた。
誰も手を上げようとしない。

「それでは今日の定例総会は終了します。みなさん、お疲れ様でした」

「「「お疲れ様でした!!!」」」

壇上の人が一礼して去ると、示し合わせたかのように周りにいた提督たちも一斉に帰り始めた。
誰もが早く自分の鎮守府に帰りたいんだろう。
今日は扶桑が改二になったのと、明石専用の工廠を増築する許可が出た。
自分も帰ろうとしたら呼び止められた。

「よう、坂之上じゃねえか」

「おう、久しぶり。松浦」

自分よりも年上だが、階級や着任時期が一緒ということでよく話す提督だった。
ため口なのは向こうがそれを望んでるからだ。

「元気そうだな」

「そっちこそ。扶桑と結婚したんだって?」

「なんだよ、知ってたのか」

まあな、と言っといた。
話していて面白い人だが、疲れていたのであんまり今日は話したくない。

「扶桑の改二が解禁されたんだ。早く帰らなくていいのか?」

「それがそういうわけにもいかないんだ」

「何やったんだよ」

「俺は扶桑以外にも結婚してるんだよ」

そういえばそうだった。
松浦は俺よりも要領がいいから、次々と練度を最大値まで上げ、ケッコンカッコカリをしていた。

「そしたらよ、大和が「また浮気したんですか!?」って言いはじめてよ。それが周りに連鎖してって…」

「大荒れだと」

泣きそうな顔で頷いた。
あほらしくて、大きくため息を吐いてやった。

「みんなが納得するような説明をしなかったお前が悪い」

「いや、説明したって」

「それでも本妻の大和が納得してないんだろ?それじゃあしたって言わねえよ」

「だよなあ…」

ま、これ以上はアドバイスのしようがない。
自分のことならまだしも、他人の痴話喧嘩まで世話したくない。

「それよりも、そのマフラーいいな。どこで買った…いや、誰からもらった?」

なんで誰かから貰ったってわかるんだよ。

「俺の推理だと…軽巡からだな」

「もらったのは当りだが、クラスは外れだ。それじゃ、俺は急ぐもんで」

おい、ちょっとその話詳しく!とか言う松浦を完全に無視して、俺は鎮守府に向かって、やや早歩きで歩き出した。








「ただいま~」

鎮守府に帰ってきたのはあれから二時間後だった。
大きな事故もなかったので順調に帰ってこれたのだが、やっぱり遠いと思う。

「お帰りなさい」

出迎えてくれたのは天津風だった。

「おう、ただいま」

「ふふっ、よく似合ってるわよ。そのマフラー」

「本当にありがとな。おかげで寒くなかった」

「どういたしまして」

ご機嫌だ。
頭の煙突からぽっぽっぽと煙が出てる。

「片付けはどこまで進んだ?」

何せ、昨日の逃走中はすごいことになっていた。
途中からゴム弾とはいえ、発砲してきたからな。
今思い出せば、よく俺は生きていると思う。

「まだ半分くらい。鳳翔さんや筑摩さんが陣頭指揮してるわ」

ま、あの二人が指揮してるんだったらすぐとはいかなくとも、ばらばらにみんなが動くよりは早く終わるだろう。
そこで天津風と別れた。
彼女も掃除に駆り出されている途中だったらしい。
見送ってから執務室に入ると、

「お疲れ様でした、提督」

五月雨が待っていた。
どうやら今日の秘書官は彼女らしい。
実は秘書艦はよっぽどの事が無い限りこちらからは指名しないので、誰が秘書艦かは顔を合わせるまで知らない。
天津風がここの所ずっとだったが、それは珍しいことでもあった。

「今日は五月雨か。よろしく頼むよ」

「はい!一生懸命、頑張ります!」

元気だなあ。
とりあえずマフラーをかけて、いすに座った。
同時に五月雨がお茶を出してくれる。

「はい、お茶です。それと、新蕩さんからお電話が来てましたよ?」

「先輩から?」

「ええ、なんでも今日、大本営が発表したことの補足なんだとか言ってました」

ちゃんと電話でメモを取ったのか、小さなメモ帳を取り出して報告してくれた。
きっと先輩の話は今日の発表されたことの結果報告とかだろう。
扶桑の改二の条件とか。

「それと、明石さんから要望がありまして」

「自分の工廠を持ちたい・・とか?」

「えぇぇ!?なんでわかるんですか!!??」

それから自分の持ってる手帳をハッと見て、後ろに隠した。

「もしかして、見ました?」

「まさか。今日の大本営からの通達でそのようなことがあったからな」

「そうでしたか…。てっきり、中身を見られたのかなあと思って。あははは…」

「よく落とすもんな、手帳」

「あう~」

そういうところが五月雨っぽかった。
見てて面白いし、いじっても面白い。

「つか、あいつが工廠を持ちたい、ねえ…」

「変わりましたよね、明石さん」

「ほんとだよ」

こっちに来た時にはろくに工具も使えなかったのに…

「いいなあ」

ぼそっと五月雨が言った。
思わず笑ってしまう。

「な、何ですか~」

「いや、別に?」

ドジをなくそうと日々頑張っているのは知っていた。
確かに、うちに来た時よりもはるかにその回数は少なくなってた。

「大丈夫、お前も結構変わってるから」

「それって変人てことですか!?」

予想もしてなかった五月雨の言葉にまた笑った。






「んで、自分の工廠を持ちたいって?」

あの後、五月雨に明石を呼んでもらった。
ちょっといじりすぎたからちょっと怒ってたけど、それでもちゃんとやってくれたからいい子だ。

「ええ!なんか作るっていうよりも、改造をしてみたいなあって」

「工廠というよりも実験室みたいですよ、これ」

明石から渡された工廠の間取り図と欲しいものリストとかを見ていた五月雨が呆れたように言った。
たしかに、フラスコとか絶対使わないだろ。

「んで?どういう改造とかしてみたいの?」

「どういう、ですか…」

明石の目がキランと光ったような気がした。

「聞いてくださいよ!今まで砲撃は弾を使うしかありませんでしたが、こう、なんていうのかな?光線で敵を穿つみたいなやつを!」

「で、さらに改良して、光線を打ったら相手を微粒子レベルまで分解するのか?」

「そうそう!そういうのですね~」

「あと、合体して威力アップするのもいいですよね~」

「お。五月雨ちゃん、そのアイディアもらいますよ!」

「本当ですか?やったあ!」

最初は聞いていただけの五月雨も話に加わり、ヒートアップしてきたときに、不意に声を低くした。
顔からは笑顔を消す。

「…で、それは実現できそうなのか?」

明石も真顔になる。

「できると思います?」

しばらくにらめっこ。
先に音を上げたのは明石だった。

「私には無理です。ただ、兵装の改良くらいならばできると思います」

「そうか、なら許可しよう」

「本当ですか?」

「本当だ。今日、大本営から同様の通達も下ったしな」

扶桑の改二も来たけど、それはまだ無理だということを知ってた。
だからあえて伏せておく。

「ただ、今まで以上に忙しくなるぞ?酒保に工廠、それに臨時の休憩所に、出撃もある」

「問題はそこなんですよね~」

ずっと見ていた限り、今でもいっぱいいっぱいだ。
そこにさらに増やすと、今度は明石が倒れてしまうのではないかと思った。

「そこで、お前さんの店にバイトを雇うのはどうだ?」

「バイトですか?」

「今日はみんな片付けで働いてるが、普段は何もなくて暇な奴らも多いだろ」

「確かに…」

「バイト代とかは必要経費に盛り込んじゃっていいから」

「じゃあ、そうします!そのほうが私も工廠のほうに打ち込みやすくなるので!!」

「了解。んじゃ、こっちの方で新しい工廠をつくることとかを上に掛け合ってくるから、しばらく待っててくれ」

「ありがとうございます!!」

その時の明石は本当にうれしそうな笑顔だった。






「うん…?」

「あ、起きられましたか?」

いつの間にか寝てたらしい。
ちゃんと転がって寝てたんじゃなくて、机に突っ伏して寝てたもんだから体が痛い。

「あ~、すまん。寝てた」

「良いですよ。昨夜は大変でしたからね」

思い出したように笑った。
今気づいたけど、いつの間にか上着をかけられていた。
そのおかげでぐっすり寝れたんだろう。

「五月雨…」

「はい、お茶ですね」

そう言って奥に行くとすぐに持ってきてくれた。

「それと…」

「はい、書類のほうは作っておきました。あ!ちゃんと白露お姉さんや夕立お姉さんに見てもらいましたから間違いはないです…たぶん」

「えっと・・」

「今日の夜ご飯ですか?」

「そうそう」

「それなら大和さんがオムライス作ってくれてます」

「あとは…」

「遠征の皆さんならもうお帰りになられて、今休んでいます」

…全部読まれてる。
一応パラパラと作られた書類も見てみたけど間違いらしい間違いはなかった。

「なんか…ごめんな」

「いえいえ!私、提督のお役に立ちたくてやったことですから」

滅相もないというようにぶんぶんと手を振る。

「んじゃ、ありがとう。おかげで助かった」

「そんな…」

そこで五月雨は何か思い出したらしい。

「あの、1つお願いがあるんですけど…」

「どうした?別にめちゃくちゃな奴以外だったら何でも聞いてやるけど」

「なんでも!?」

言いすぎたかなと思ったけど、まあ、俺が寝てる横で色々仕事してくれたからいいとするか。
それに、五月雨はなんか困らせるようなことを言ってこないと確信に似た感情を思っていた。
そして、それは当たってた。

「じゃあ、私を撫でてください。よく頑張ったねって」

照れて顔が真っ赤。
なに?すっごい可愛いんだけど??

「提督?」

「あ、ああ。いいぞ。よく頑張ってくれたね、ありがとう」

やさしく頭をなでてやる。
気持ちよさそうな顔をした。
しばらく撫でてやってから、急に「用事を思い出したので!」と言って出ていってしまった。
それから五月雨はやってこなかった。
まあ、ご飯食べたらおしまいだったから、特に咎めることもせずにそのまま終わった。







頭にまだ撫でてもらった感触が残ってる。
無意識にそこを手を触れ、にやけてしまう。

「よく頑張ったね」

提督のその言葉を、その時の優しげな顔を思い出し、枕に顔押し付けてバタバタする。
もうその行動を無意識のうちに何回もしていた。


「五月雨嬉しそうじゃん」

「白露、五月雨嬉しそうっぽい!」

何やら大変そうな面持ちで相談を受けに来た時には何事なのかと思ったが、なんてこともない書類チェックのお願いだった。
聞いてみれば提督が途中で寝てしまったらしい。
でもああして幸せそうな顔して部屋に戻ってきたということは、きっといい結果に終わったんだろう。

「でもいいなあ、夕立もほめられたいっ!」

「なら、明日の秘書艦に立候補すればいいんじゃない?」

「でもでも、競争率高いぽい~」

「問題はそこだよねえ」

ちらりとベッドに転がって、二へ~っとしてる妹を見た。
だらしないと同時に、本当にうれしそうだ。
たぶん、ご飯食べることも忘れてる。

「本当、競争率高いからねえ…」

きっと昨夜の天津風事件がトリガーになったのだろう。
ここのみんなはどこかゆっくりしてるから、提督に対しても奥手の子が多かった。
ところが今日はもう、ほとんどの子が秘書艦くじに参加。
運よく五月雨が、並み居る幸運艦を押しのけて秘書艦の座をゲットした。
明日もたぶん、大変な騒ぎになるんだろう。

「あれ?どこに行くっぽい??」

「ちょっと散歩しに行ってくる」

なんて言うのは嘘で、提督のところだ。
ちょっと加熱し始めてることを伝えに。
ついでに自分も褒めてもらいにいった。
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プロフィール

結城

Author:結城
結城 史進(ゆうき ししん)
大学生から社会人に変身した。
最近は仕事をする傍らで帰ってからSS書いたりするのが趣味。
合同誌に少しながら参加していったりしてます。

最近の参加/発表作品
C90 
清霜合同(主催:kogasana様)
砲雷撃戦!よーい!合同演習四戦目 
こんにゃく合同(主催:せのん様)
坂之上鎮守府の一日~榛名、頑張ります!~
C91
潜水艦合同(主催:茶在)

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