スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

”初”日の出

「え…明日の天気、雪?」

鎮守府の食堂で重箱におせち料理を詰め込んでいた私たちの提督、連理が信じられないという顔で言った。

「嘘だろ、天津…。昨日までの予報ならぎりぎりで晴れるって言ってたじゃないか……」
「そ、そんなこと言われても、天気予報でそう言ってたのよ。低気圧が予想よりも発達して移動するから?らしいわよ」
「榛名も天津風さんと見ていましたけど、その通りでした。そして、明日一日雪になると」
「うっそ~ん」

明らかに連理は落ち込んでいた。
それもそのはず、正月はやっぱり初日の出見ないと!と盛り上がっていたのだ。
そして、連理だけじゃなかった。
私、天津風を含めたみんなががっかりしていた。

「初日の出、見れねえのか」
「そんなに落ち込まなくてもいいじゃない。元旦に見えなかったら二日に見ればいいんだし、それに日の出くらいならいつでも見えるじゃない」
「そうだけどさ、やっぱり初日の出って拝みたいじゃん?ほら、初物と言われたら食べたくなるのと同じよう感じ」
「わからないことないですけど…お天気ですし」
「そうよ、榛名さんの言う通りだわ」
「う~ん、わかっちゃいるんだよ。わかっちゃな…」

だけど、割り切れないと言った声だった。
私だってこの艦娘として初めて迎えるお正月はわくわくしてるし、初日の出だって楽しみにしていたけど、ここまで落ち込まない。
また再来年かな?と思うだけ。

(ねえ、榛名さん。そんなに初日の出っていいものなの?)
(うう~ん、人によりけりって感じですね。だけど、提督…じゃなくて連理さんは毎年楽しみにしておられるんです)
(吾輩はどっちでもいいんじゃがな。不思議と初日の出を見ないお正月は何か物足りなくなってしまうんじゃよなあ)
(大切な一部って感じなの?)
(そういう感じですね)

「ほらそこ。早くおせちを詰めないと特番見れないぞ~」
「「「は~い」」」

連理から注意されて、そこからは初日の出が話題に上らなくなった。

そのあとは、みんな一生懸命きれいにおせちをお重に詰めて、そのあと公共番組の歌番組見たり、民放のクイズ見たり、笑ってはいけないような番組を見て過ごし、

「お蕎麦できましたよ~」
「来たぞ、年越しそばだー!!」
「なんでえび天があるんだ?これ提督のか?」
「よくわかったな天龍。それは俺が食いたいってリクエストしたんだよ」
「「え~?」」

間宮さんと伊良湖さんが作った手打ちそばに舌鼓を打ち、

「もうすぐ年越しだけど、みんなおきてるか?」
「軽巡はみんな起きてま~す」
「比叡?起きてマスか?」
「私、ちゃんと、起きてます!」
「五航戦の子が寝てます」
「…っは!起きてるわよ!!って、翔鶴姉。なんで笑ってるの~」
「ほら、年明けるぞ。3、2、1・・・」

「「「「あけましておめでとうございます」」」」

新年のあいさつが大合唱になって、みんなで笑ってから寝た。







チョンチョン
……チョンチョンチョンチョン

「ん…何……?」

誰かに突かれる感触で目を覚ますと、連装砲君が目の前にいた。
そばには島風の連装砲ちゃんに秋月の長10㎝砲ちゃんもいる。
鎮守府不思議生命体(?)そろい踏みなのに、その主人たちは見えない。

「どうしたのよ、いったい」

キュイキュイと必死に身振り手振りで私に何か伝えようとしてるけどさっぱりわからない。
何か外が気になるのかしら?
部屋の中だからあったかいけど、きっと外は寒いだろうからマフラーと手袋をつけておきる。

「さて、どうしたの?」

キュイキュイーー

「あ、ちょっと待って!」

よほど早急に知らせたいことがあるのか5匹(?)の砲たちがわらわらと廊下に出ていった。
ふと思ったけど、あの子たちどうやって入ってきたのかしら。
ドアノブの高さはあの子たちの背丈よりも上の方にあるのに…

キュイーー

「あ、ごめんね。すぐ行くわ」

まだ日が出てきてないから廊下は薄暗くて、すごい寒い。
連装砲君たちは寒くないのかしら?
そんな私の思いとは関係なしに連装砲たちはずんずんと廊下を突き進んでいく。
寮から出て本館と呼ばれる執務室や食堂とかが入った屋内に入った。

「屋上なの?」

キュイキュイーー

「あ、ちょっと!」

私を屋上まで案内すると彼(?)らは満足したように私を置いて、どこかへ駆け足で行ってしまった。

「屋上に一体何があるのよ。うう、寒い!」

こんなところに来るんだったらもう少し防寒の用意をしてくればよかったけど、後の祭り。
それよりも連装砲君たちがなんで私をここに行かせたのかが気になったので、取りに戻ろうとは思わなかった。
まだ暗い空、それに冷たい空気のせいで見えてはいけないものでもいるんじゃないかと思ってしまう。
だから、

「て、提督?」
「よっ」

気持ちよさそうに夜風を浴びてる連理を見つけた時はびっくりした。

「ど、どうしたのこんな時間に」
「そりゃこっちのセリフ。お前さん、ゆっくり寝るって言っとったのにどうしたんだ?あ、夜風にでも受けに来た?」
「そんなわけないじゃない。連装砲君がここに連れてきたんだけど…あなたの差し金じゃないの?」
「なんで俺が寝てる子を起こすんだよ」

ぷっく~と連理が頬を膨らませた。

「それもそうよね…」
「信じてくれたか」
「ええ。それで質問し直すけど、あなたはここで何やってたの?こんな曇り空だから星を見に来たわけじゃないでしょうし、夜風を受けに来たなんてこともないでしょうし」
「あ~、初日の出を見にな」
「初日の出…って雪降るから見れないって言ってたじゃない。呆れた」
「そうなんだけどさ、見れるんじゃないかと思って」
「何をそんなにムキになる必要あるのよ」
「だって、雪降るから無理だって諦めた年さ、めっちゃ晴れてたんだよね。それも何回も。だから今回もみんなは諦めてるけど晴れるんじゃないかって思って、うお!」
「きゃっ!」

突然、連理のポケットに入ってたスマホのアラームが静かの夜にけたたましく鳴り響いた。
全く予想もしていなかった音につい悲鳴を上げてしまった。

「おお、ごめん。時間だ」

私に背を向け、東からちょっとずれた方向をじっと見始めた。
まだどんよりとした雲が覆ってる。
それでも彼は期待に満ちた目でずっと見てた。
私もそんな気じゃなかったのに、いつの間にか彼と並んでずっと見てた。
そしたら15分位たった時、

「天津風!あれ!!」
「私も見てるから大声出さなくてもいいわよ!」

急に雲が晴れ、昼間の太陽とは全く違う、真っ赤な太陽が雲の隙間から顔をのぞかせた。
夜戦明けに日の出を何回も見ているが、なんか、こう…言葉では表せないような思いが胸に溢れてきた。
そう、これが初日の出…
良いものね。

「……」

そっと隣を見ると穏やかな表情で祈っていた。

「ほら、見えたろ?」

そういう彼の顔は本当にうれしそうで。

「そうね、今年もよろしくね。あなた」

私もうれしかった。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

結城

Author:結城
結城 史進(ゆうき ししん)
大学生から社会人に変身した。
最近は仕事をする傍らで帰ってからSS書いたりするのが趣味。
合同誌に少しながら参加していったりしてます。

最近の参加/発表作品
C90 
清霜合同(主催:kogasana様)
砲雷撃戦!よーい!合同演習四戦目 
こんにゃく合同(主催:せのん様)
坂之上鎮守府の一日~榛名、頑張ります!~
C91
潜水艦合同(主催:茶在)

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
検索フォーム
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

来訪者数
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。